帝国の幻影~壊れゆく世界秩序~プーチン氏が描くロシア【5】
ウクライナに侵攻するロシアのプーチン大統領は、ロシアが帝国だった時代の考えに今も影響されているといわれます。欧州のほかの国では、攻め込まれることを恐れる声も絶えません。ロシアの政治や歴史に詳しい、ドイツ東部フランクフルト・オーデルにあるヨーロッパ大学ビアドリーナのカール・シュレーゲル名誉教授(東欧史)に聞きました。
――プーチン氏はウクライナを独立国ととらえていないようです。
プーチン氏は、根本的なところで帝国的な考えを持つ「帝国の男」と言えます。
ロシアは今も帝国的です。約8割が(民族としての)ロシア人、あるいはロシア語を話す人々ですが、形の上では多民族国家です。しかし、実際には非ロシア人の人々がロシア化され、ロシア人やロシア語話者によって支配されています。
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プーチン氏は、ウクライナの独立やアイデンティティーを認めていません。(ロシアの帝政を崩壊させた1917年の)ロシア革命が大嫌いで、革命指導者だったレーニンがウクライナなどにソ連内で共和国の地位を与えたことを批判しています。91年のウクライナの独立が、彼の考える帝国の枠組み崩壊の始まりになったからです。彼にとって、ベラルーシや人口4千万のウクライナを失うことは、ユーラシア大陸においてロシアが考えるスラブ民族中心の優位な地位をおとしめることを意味します。
――プーチン氏は、ロシア帝国の復活を望んでいるのでしょうか。
彼は歴史の神話をつくり出し…